そこには、君が






『はっきり言われて、良かった』






最初の強い意志が、


また見えた気がした。


こうなることは予想していただろうに、


最後に私に言わせてくれたんだろうか。








『俺はこの後ちゃんと警察に行く。それは信じて』







「信じてる。ちゃんと罪を償えることも、分かってるから」








徹平が後悔しているのはちゃんと伝わったし、


きっとこの先も罪を忘れることなく、


また守りたい誰かが出来た時に、


正しい方法で守ることが出来る。


彼の全てを理解した上で、


彼自身を愛してくれる人が必ず現れる。


私はそう思った。







『じゃあ、電話切るね?』






「あ、待って…!」







急いで言葉を発する。


ちゃんと最後は終わりたい。








「好きになってくれてありがとう。私に優しくしてくれて、ありがとう」







数えきれないほどの、ありがとうが、


次々に湧いてくる。









「大好きだった。本当に、好きだったから!」







徹平が、これからいっぱい、


いい人に出会えますように。


徹平が、これからどんなことも、


乗り越えていけますように。







「…ばいばい、」







私の最後の一言で、電話は切れた。


無機質な機械音だけが響いている。


通話の終了の合図だ。


終わってしまった。









「ふぅ…」







ため息を1つ。


こぼした時に、鳴ったメールの受信音。


送信者は、さっきまで電話していた、


徹平だ。


手紙のような、


最後のメッセージだった。








< 174 / 325 >

この作品をシェア

pagetop