そこには、君が





明香へ


最後のメッセージを送らせてください。


今、警察署へ向かいながらメールを打っています。


さっきは何も言わずに電話を切ってごめん。


もう何を言っても、どう考えても、


好きだと言うことしか出てこなくて、


伝えることは許されないと思ったから、


無言で切ったんだ。


だけど往生際の悪い男なので、


最後にこんな未練たらしい文章を書きました。


明香にもう会えないと思うと、


すごく寂しくてたまりません。


けどちょっとだけ、気持ちが晴れやかです。


今から全部過去を話して、裁いてもらえる。


何がきっかけであれ、俺のしたことでもあるので、


少し肩の荷を下ろせた気がします。


これでやっと、被害者の方に面と向かって、


謝罪を向けられると、そう思っています。


勝手だけど、今の俺に出来ることだと、


そういう気がします。


本当はこんなんじゃ許されないのは分かってるから、


俺は一生罪を背負っていくつもり。


明香に出会うまで、俺の中はぐちゃぐちゃで、


もう生きていても仕方ないと思った。


だけど明香が現れてから、俺はすごく、


明日が楽しみになって、毎日が幸せだった。


それは束の間のものだったけど、


確かに俺のものだった。


明香のおかげだ。


本当にありがとう。


最後に。


このまま明香を手放すのは悔しいので、


言わない約束だったけど、言います。


あの公園でいつも明香の好きな音を


奏でていたのは、いつも身近にいる人でした。


彼がそんな趣味があったなんて意外だったな。


でも今回のことを含めて、彼にはずっと、


人としても男としても嫉妬させられっぱなしだ。


自分の中の芯があって、


音楽も運動も出来るなんて、


羨ましい限りだ。


彼は明香を大事に思っているんだね。


負けたよ。


ということで、


明香が知らずに恋をしていた相手は、









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