そこには、君が
「何も思わねえのかって聞いてんだよ」
「だから!…何にって、聞いてんじゃん…」
こんな距離なんて、
いつもは普通だった。
何の躊躇いなんか無く、
常に寄り添っていた。
「…つくづくお前って頭悪い」
「は、何それ…、むかつく…」
大和はいつも、人を馬鹿にする天才だ。
腹が立ったので、両手が塞がっている
大和の鼻を思い切り摘んでやった。
痛がる大和を横目に私は腹を抱えて笑った。
久しぶりに思い切り笑った。
「ただいま!って何!もう2人でゲーム?!」
コンビニから帰ってきた京也が、
ずるい、と混ざってきた。
勢いに負けて私も大和も倒れ、
3人で床に寝転んだ。
3人で笑った。
やっぱり安心感が違った。
「京也、何買ってきたの?」
「んーと、これ。明香の好きなお菓子」
それと、好きなジュース。
あとは…、と私の好きなものばかり
袋から取り出した。
大和へのものは飲み物1つで、
納得いかない大和は私のお菓子を
奪い取った。
それに腹を立てる私は、
京也に泣きべそかいて助けを求めた。
京也は必死に取り返そうと、
大和へ向かった。
いつもの流れだ。
いつもの時間だ。
私はこの時間が好きで、
この空間が大好きで、
いつまでも続いて欲しいと、
そう思った。
引っかかるのは、徹平のメールの最後の言葉。
音を奏でていたのは、大和だということ。
嘘だと思いつつも、もしそうだったら、と。
それが頭から離れなかった。
「眠い」
「寝よう」
「待って、ずるい俺も!」
大和のベッドで3人並んで電気を消した。
当然、真ん中にいるのは私で。
大和は私に腕を差し出し、
それに頭を乗っける私。
そんな私に寄り添う京也。
温かい、私の居場所だった。
久しぶりに深い眠りにつける。
そんな気がした。
翌朝、昼過ぎまで眠った私たちは、
徹平の名前がテレビに出たことは知らず。
世間が騒いでいる中、
3人で夢の世界でゲームをしていた。