そこには、君が
ごの
いち
ピピピピ…
体温計の音が響いた。
棚橋明香、絶賛風邪引き中です。
4月の始業式。
体調不良のため、本日欠席いたします。
「うわ、まじか…」
目を覚ますと、凛からのメール。
3年生のクラスは、私と凛、
大和と京也の4人勢揃いという報告。
もしかしたら、と思ったけど、
まさかそうなるとも思わなくて、
驚きが声に出た。
だけどか細い声しか出ないのは、
高熱が出ているせい。
「うん…大丈夫…」
『全然大丈夫じゃないでしょ!お見舞い、本当にいいの?』
「移すと…、いけないし…」
始業式が午前中で終わり、
凛が心配そうに電話をくれる。
お見舞いに行くと言う凛を、
私は丁重にお断り。
きっと発熱しているだけなんだけど、
移したらどうもできないから。
『うん、あ、言っとくね』
「ん?何…」
明らかに私に向けたわけではない声が、
私の耳に届いた。
そしてその後に告げられた言葉は。
『永森くんが鍵開けとけってさ!』
「…なんだ大和か」
本当に、ベッドから出るのも、
億劫だというのに、
奴は鍵を開けに玄関へ向かえと
いうんだな。
相変わらずの暴君っぷりに、
笑いが溢れる。
『とにかく、休み明け学校でね!』
「心配かけてごめんね。電話ありがとう」
通話を切ると同時に、
気だるい体を起こして
玄関へ向かう。
実は家に解熱のための道具は
1つもないと言っても間違いではない。
かといって、大和が買ってくるわけでも
ないだろうし。
まあいいか。
とりあえずベッドへ戻ろう。
意識が朦朧としている中、
携帯のディスプレイを確認。
時間が12:16を表示している所で、
私の意識は飛んだ。
体が本当に熱くて、今にも
焼けちゃうんじゃないかって思う。
火照りすぎて布団を無意識にでも
脱いでいるかもしれないな。
夢は何も見なかった。
目が覚めたのは16:10。
一瞬で時間が経った感覚だ。