そこには、君が
それからまた眠たくなって、
次に目が覚めた時は、
部屋中に漂っている優しい香りが
したからだ。
「ナイスタイミング」
「…ん、この匂い、」
枕元で大和の声がする。
良い匂いによだれが出そうになった。
大和はというと。
静かに私の髪を撫でていた。
それが心地よくて、
少しの間、わざと目を瞑っていた。
「味の保証はない」
「え?」
「雑炊。作ったから食え」
待ってろ、という大和は、
本当に優しくて、どうしようもない。
私は熱があるからかなんなのか、
そばにいてほしいと、そう思った。
「体、起こせるか」
大和は器に雑炊を入れ、
レンゲまでつけて運んでくれた。
それを床に置き、私をゆっくり起こすと、
雑炊をひとすくいし、冷ますために、
息を吹きかけてくれている。
風邪なんか滅多に引かないから、
こんなに優しさがすごく染みる。
「熱いぞ、ほら」
「ん」
正直高熱のせいで味覚はないけれど、
それでも優しい思いが伝わって、
誰が作るよりも格段に美味しかった。
心が満たされていく。
体調も少し良くなった気もする。
「薬、飲め」
「えー…苦いの、無理」
「わがまま女かお前は」
プチプチと音を鳴らし、
2粒取り出すと私に手渡す。
水を持たされ、嫌なのに…と、
文句をこぼす。
「薬なんか飲まなくても治る」
「治んねえよばか」
「まだ1回もっ…」
そう言って大和を見ると、
は?と言いたげな顔で私を見ている。
何よ、と口を尖らせると。
「さっき飲んだだろ」
「は?飲んでないけど」
「あ、記憶ねーのか」
大和は仕方ないと言いたげな顔で、
私から水を受け取ると自分の口に含み。
「こうやって飲んだろ」
と、私に近づいた。
薬を取り出す真似事をして、
エアーで私の口に薬を入れる動作を見せ、
私にキスをするようにして、
顔を近付けた。
つまりは、そういうこと。
こうやって飲ませたんだ、と。
意地の悪い顔で私を見た。