そこには、君が
「わわわ、分かったから、もう退いて!」
慌てて大和を引き離すと、
私は薬を一気に口に入れ、
喉奥に流し込んだ。
恥ずかしさも一緒に。
嬉しさも、一緒に。
「もう寝ろ。俺は帰るから」
大和はそう言うと、
私が食べ終わった器を流し台に戻し、
私の解熱シートを貼り替え、
枕元に清涼飲料水を用意した。
「ちゃんと起きたら熱測れよ」
「大和…」
不器用な言い方で優しさを見せる。
大和はベッドに近寄り、私の頬に手を当て、
じっと私を見つめた。
熱の、せいだ。
「待って…、」
体が熱いから。
頭がぼーっとするから。
そのせいで私は、
大和の手を引っ張ってしまった。
「明香、」
「ここにいて」
そばにいて欲しかった。
どこにも行かないで欲しかった。
どうしてか今日は、
わがままな日だった。
「なんだお前」
「…あ、ごめん。あの、」
ちょっと調子に乗りすぎたかも、と。
慌てて手を離すと。
大和は私の布団を捲ると、
詰めろと言った。
その様子から、
布団に入ってくる様子だ。
「え…?」
「行くなって言ったの、お前だろ」
少し強引に私を押すと、
体を横にし腕を差し出した。
少し躊躇いながらも、その腕に頭を乗せると、
大和は髪をゆっくり撫でてくれた。
「狭すぎる」
「仕方ないでしょ。シングルなんだし」
私が十分に寝られるスペースを残し、
自分の体を極力端っこにやって、
それでも近くにいようと、
私を包み込んでくれた。
私は今自分が感じているドキドキに、
どんな名前が付くのか分からなかった。
だけど、似たような味わったことのある想いで
あることは、分かっているんだ。
「明日には治る」
だからもう寝ろ、と。
私に安心をくれた。
大和の優しさが、私を安心させた。
目を瞑ればすぐに夢の中へ飛び、
すぐに朝になった。
熱はすっかりと下がり、
気分は爽快だった。
大和にお礼を伝えると、
100万寄越せなんて言い、
相変わらずの男だった。