そこには、君が
自分の家の階を通り過ぎて、大和の家へ。
お邪魔します、と声をかけると、
奥の部屋から大和のお母さんが顔を出した。
「明香ちゃん、久しぶりね」
「全然家にいないじゃないですか」
そのせいでどれだけ私がこき使われてると…、と。
言いかけて無理矢理口を閉じた。
「大和は?」
「今コンビニ行くって出て行ったわよ」
すれ違わなかった?
とぼけた様な口調で首を傾げるお母さん。
私はとりあえず大和の部屋へ入って待つことにした。
それにしても、コンビニ行けるなら、
自分で買い物出来たんじゃない。
腹が立つのを抑えながら、
大和のベッドに座り込んだ。
それからしばらくして、玄関のドアの音が聞こえた。
乱暴な足音が聞こえ、それは部屋へと向かってくる。
「いたのか」
「自分が呼んだんでしょ?」
あれだけ買ってこいと言っておいて、
目の前に来るといつもこうだ。
私は手に持っていた袋を思い切り振り上げ、
大和の目の前に突き出した。
「お望みの物ですどうぞ」
すると大和は少し笑って、
サンキューなんて軽い礼を言う。
それと同時に私の髪をくしゃくしゃにした。
大和の大きい手で、撫でられる感覚が
嫌ほど伝わる。
「ちょっ…と!やめてよ…!」
いい加減にしろ、と怒った様子を見せると、
大和は楽しそうな顔で私を見ている。
熱くなった。私の、頬が赤くなった気がする。
「飯食ってく?」
「お母さんに悪いからいい」
「じゃあ、食いに行く?」
「普通に行かないでしょ」
大和はふーんと言いながら、
私の隣に腰を下ろした。
こんな広い部屋なのに。
座るところなんていっぱいあるのに。
なぜか知らないけれど、
ベッドの上の、私の隣。
「む、向こう座ってよ」
「は?なんで」
「いいわ、私が行きますんで」
急いで距離を離した。
頬どころか、
体が熱くて仕方ない。