そこには、君が






不自然かな、って。


気付いた時には遅かった。






「お前さ、」






大和はこういう小さい変化に敏感だ。


私たちはいつも近くにいて、


寄り添って寝るし、


もたれかかって座るし、


そんなこといつものことだった。








「最近おかしくね?」






大和がそんなこと思うのなんて、


当然のことだった。






「は?何、おかしくないけど」






おかしいよね。


分かってるんです、私だって。


だけど耐えられないんだもん。


変な感じになっちゃうんだもん。







「何でそんな態度?」






「だ、だから何が?至って普通でしょ」







開口一番の声が籠る。


スラスラと言葉が出ない。


緊張にも似た感覚が私を包む。


自分がおかしいことなんて、


ちゃんと理解してる。







「なんで避けんだよ」







「だから、避けてないでしょって」








もうこの場にいられなかった。


私はそそくさと立ち上がり、


部屋の出口へと向かう。








「明日の準備、しないとだから帰るね」







「待てって、おい…!」







バタン。


私は大和の声を聞き入れず、


言い終わりも聞かないまま、


部屋を出た。


急いで家に帰る。


足音なのか、心臓の音なのか分からないくらい、


うるさい。







「やばいって…」






準備はちゃんと終わっている。


だけど明日からの修学旅行を目の前に、


大和とは不穏な空気となってしまった。








< 188 / 325 >

この作品をシェア

pagetop