そこには、君が





「気をつけて行ってこい!」






大和のお父さんは学校まで送ってくれると、


私の荷物を丁寧に下ろしてくれた。


大和はお父さんの勢いには負けるようで、


無愛想なくせに、ちゃんとお礼は言っていた。







「明香、話がある」






「荷物重いなー…」






「ちょっとだけ待てって」







「あ、凛だ!りーん!」








ひたすら無視をしていることは分かっている。


噛み合わない会話が続いていることも気付いている。


だけどそれより、顔が見れない。








「明香、おはよう!荷物やばいね!」






駆け寄ってきた凛は笑顔のまま、


隣の大和をチラッと見て一言。








「永森くん、機嫌悪すぎない?」








と、冷静に言った。








「いや、分かんない」







「明らか怒ってるよね…?」







「明香まじで覚えてろよ」








大和はそう言い残すと、


私たちを横目に遠くにいる京也の元へ


歩いて行った。









「何?どうしたの?」







「…また話す」








どう話していいか分からず、


一旦忘れることにした。


だって意味の分からない喧嘩だもん。


私がいつもと違う大和に、


翻弄されました、だなんて。








「荷物積み終わったら、バスに乗りなさーい」







それぞれの担任が声をかける。


その合図で私たちはバスへクラスごとに乗り込んだ。


事前学習で決めたバスの座席順。


私はもちろん凛と隣で、大きめの座席に


2人でゆったりと座ることができる。







「永森くんたちは?」






「後ろ」







当然大和たちの席も確認済み。


大和と京也は私たちのすぐ後ろ。


バスが出発して数分だが、


すでに車内は大盛り上がりだった。








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