そこには、君が
私は、凜と持ち合わせたお菓子を片手に、
外を見ながら話していた。
その時。
「そういえば棚橋さんってさ、」
突然通路の向こう側に座っている男子が、
私たちに話しかけてきた。
その人たちは1年生の頃に同じクラスで、
普通に話せる仲の人だ。
「彼氏いるの?」
突然な質問に、気が抜けた。
「何、急に」
「こういう時にしか聞けないなって思って」
「そっちはいるの?」
「俺はいないけど、こいつはいるよ」
「おい、言うなよ!」
じゃれ合う2人の男子に、
ただただ笑ってしまう。
クラスでの行事なんて久しぶりで、
すごく楽しい。
「じゃあじゃあ、キスはしたことありますか!」
「お前、何聞いてんだよ!バカだな〜」
こんなふざけた会話さえも面白くて、
凛と私はケラケラと笑う。
「いや言わないよ」
「えー!言ってよ!」
大笑いする男子。
車内は盛り上がる中で、
バスが道路の窪みにでも入ったのか、
大きく上下に揺れた。
と、同時に、背中に衝撃が走る。
「絶対あるだろ〜」
「言いませーん!」
凛と2人で言い返す。
男子は笑ってお互いを見ている。
そのタイミングでまた、
背中に衝撃が走った。
今度は明らかに分かる。
後ろから座席が蹴られているんだ。
「ちょっと」
私は後ろを覗き込み、
思い切り睨みつける。
大和は不服そうな顔で私を見ていた。
「蹴らないでよ」
「当たっただけだろ」
「なわけないじゃん、蹴ってたよ」
言い返すと何も言い返せない大和は、
目を瞑って寝るフリを見せた。
隣で京也も少し不機嫌で、
面倒な雰囲気を醸し出している。
何を言っても解決しないと踏んだ私は、
無視をすることにした。
隣の男子は何も気づいていない様子で
話しかけてくる。
別にクラスメイトだし、
話すのなんて悪いことじゃない。
それより何より言葉で言ってこない大和が、
もう腹立って仕方なかった。