そこには、君が
「仲が良いっていうか、1年の時に一緒のクラスだったから話せるだけ」
質問の意図は読めないが、
私の答えた内容に納得がいかない様子で、
口からは、“へえ“と一言だけ放たれた。
何なの、その態度。
私は一気に腹が立った。
部屋では女子で色々話しているに違いない。
私だって、この旅行を楽しみにしている。
なのに、こんなどうでもいいことを聞くために、
わざわざ呼び出したというのだろうか。
「ちょっと、まじで何なの?」
「は?」
「言いたいことってそれだけ?そんなの、今じゃなくたっていつでもいい話よね?」
これは私の悪い癖でもある。
言いたいことがいっぱいある時は、
自分でも抑えられない。
「第一、仲良くたって関係ないでしょ?座席蹴らなくたって、口でも言えるじゃん」
何かを伝えたいわけじゃない。
ただ、苛立ちを、目の前の男にぶつけたい。
「いい加減にしてよ。もういい?戻るよっ…!っ、」
すると突然大和は、
私の両頬を思い切り掴んだ。
さっきまで喋っていた私の口は、
摘まれたことにより思うように動かせず、
黙らざるを得ないようになった。
そして。
「うるせえ女だな、ったく」
そう言って大和は私に近付き。
思いっきり、私の額に向かって、
自分の額をぶつけた。
コツン、なんて可愛いものではなく。
思いっきりの、頭突きだ。
「痛っっったぁ…!!」
悶える私はしゃがみ込む。
押さえる額は熱を持ち、
私の体温を上昇させた。
「何すんのよ…」
「明香」
上から私を見下ろす暴君は、
少し口角を上げ、
なのに声色は低く。
「あんま調子乗んな、ばーか」
大和はそれだけ言い残すと、
痛がる私を無視してエレベーターの中へと
消えていった。
悔しさだけが残り、
私はどうすることも出来ない怒りを、
グッと飲み込むしかなかった。