そこには、君が
夕食を済ませ、各自消灯時間まで
部屋で自由に過ごせる時間。
私たちは部屋で、女子同士の交流を深めるべく、
持ち合わせたお菓子を大いに広げる。
幸い同じクラスになったことのある女子ばかりで、
初めましてではないものの、
いつも凛としか話さないだけに、
他の女子との会話は少し緊張するものがある。
仲良し2人組が3グループで6人。
色んな会話が飛び交い、
部屋の中は賑わいでいっぱいだ。
「じゃあ次は恋バナしよー!」
「あ、いいね!みんなの話聞きたいー!」
女子たちはみんなノリがすごくいい。
だけどこの話題だけは避けたかった。
絶対無理なのは分かっていたけれど、
出来れば話に混ざりたくない。
だって、なんか、言えることがない。
「じゃあ時計回りでいこうよ!」
「じゃんけんで負けた人からね!」
着々と主導権を握られ、
断ることもできず、
言われた通りにじゃんけんを。
そしてこういう時に、
運が悪いのが、この私の特徴である。
「じゃあ、明香から!どうぞ!」
「あー…えっと、そうだな、」
口ごもる私を凛は横目で見ながら、
少し含み笑いをしている。
何が言いたいか分かっている様子だ。
「私は特にないんだけど…、気になる人っていうか、うーん、分かんないんだけど、」
どうやって伝えたらいいか分からず、
早口で訳の分からないことを言ってしまう。
気になる人というワードで、
脳内で反応したのは、
大和の名前だった。
凛が大和を推しているからだ。
好きなんじゃないの、なんて言うから。
「じゃあ気になってること聞いていい?」
「あ、うん」
「永森くんと津田くんと仲良いでしょ?」
きました、この質問。
そうだよね、聞きたいよね。
私はこの手の質問を、幾度となく受けてきた。