そこには、君が






返す答えは、決まって。








「不可抗力っていうか、不本意っていうか…」








これだ。


そしてそう言うと、相手は大抵、


困惑した顔をする。


今回も同じ様だ。


だって小さい頃から一緒にいれば、


自ずといるしかないわけでして。


本当に不可抗力だし、


それで色々させられているのも


不本意だし。


間違ったことは言ってないが、


説明がしづらい。


理解されるとも思ってはいないけど。









「でも羨ましいよね、同じ女としては!」







「うん、あの2人かっこいいもんね〜」








分かる、分かると、


全員が頷いた。


やっぱり周りからすると、


そう思うんだな。


私は凛と目を合わせて、


首を傾げた。







「でもさ、津田くんは雰囲気柔らかいけど、永森くんは少し怖いよね…」





「分かる。なんか、近寄りがたいというか、」






そう言われて、そう思われても


仕方ないと半ば呆れ心で話を聞く。


だけど。







「タバコとか、万引きとかしてるって、本当なのかな?」







「悪い人と関わってるって、聞いたけど…」







根も葉もない噂だけは、


どうしても聞き入れられなかった。







「大和は、」







大きな声が出た。


あと少し声色が低めな気がする。


自分の声ながら、こんな風に出すことが


あるのかと驚いた。








「そんなことしないよ」






「そうだよ!永森くんは、そういうの嫌いだと思う!」






私に続いて凛が声をあげてくれた。


そんな私たちを見て、疑いをかけた女子は、


すごく困った顔で謝ってくれた。








「ごめん!怒らないでね?」






「ちょっと気になって言っただけだから!!」






「明香、凛。本当悪く思わないで…!」






4人はそれぞれに謝罪の言葉を述べる。


その表情から悪気があったものじゃないと


分かったので、私も大声出してごめんと謝り返した。


そう疑われても仕方ないとは思う。


無愛想で、無茶苦茶な男だし、


勘違いしている人は少なくないはず。


だけど、大和は悪いことはしない。


いつだって、誰かを守るために自分を犠牲にする人。







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