そこには、君が






「永森!いるか?」






入るぞー、と担任であろう人が


部屋の中へ入ってくる。


こちらに足音が近付いてくる気配がした。








「なーに寝てんだ、お前は!朝食の時間だろ!」






「飯より寝てえ」






「集団行動くらいちゃんとやれお前は!」







そう言って先生は、


あろうことか大和が被っている布団を、


思い切りめくろうとした。


私の真っ暗な視界に少し光が入る。


終わった。








「っ…ちょ、やめろって」







大和は焦った声で布団を戻し、


間一髪のところで見つからずに済んだ。


心臓がバクバクいっている。


布団が捲られそうになった時、


必死に大和の腕は私を引き寄せた。


不覚にも、高鳴ってしまった。


なんかずっと抱きしめられているみたいな、


そんな感じがする。


ふと考えてみれば。


最近大和に触れていなかった。








「今用意して行くから」






「絶対だぞ。待ってるからな〜」








担任は、ったく…と声を漏らし、


そのまま部屋を出て行った。








「行ったぞ」







大和の声が聞こえると、


私は布団を勢いよく捲り、


ベッドの外へと急いで逃げた。


このままじゃドキドキが伝わると、


そう思ったんだ。








「準備すっかあ」







「先…行ってるから」








本当に私、どうしちゃったの。


こんなの嫌でも分かっちゃう。


好きみたいじゃない。







「棚橋、どこ行ってたんだ」






「トイレです」






レストランの入り口付近には、


教員が並んで座っている。


そこにはさっきまで大和の部屋に来ていた


担任が、大口開けて朝食を食べていた。


私がいないことも分かっていたのか、


姿を見つけるとすぐに声をかけてきた。


私は下手なことを言うとバレると、


瞬間に察知し、顔も見ずにトイレと嘘をついた。


しつこく聞かれるかと思いきや、


よほど腹が減っていたようで、


早く座れと一言言うと、目の前のパンに


必死に食らいついていた。







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