そこには、君が
さん
連休を挟んで休み明け。
教室近くで叫ぶ、凛の声。
「明香~!」
大和と京也と歩きつつ、
振り返って凛の存在を捉える。
凛は嬉しそうに笑いながら、
私に飛びついた。
「朝から元気な奴」
「凛ちゃん、いいことあった?」
事情を知らない大和と京也は、
不思議そうに凛を見つめる。
私はあの日の夜のことを、
2人には話していない。
「えっ、分かる?」
「分かるだろ。顔見りゃ」
「超絶にんまりしてる」
やばい、と凛は顔を覆う。
私は今すぐにでも、
ここを抜け出したかった。
なぜだろう。
いつもなら、何でも話せた2人なのに。
あの日の彼のことは、
なぜだか言えない。
「で、どうしたの?」
そう尋ねると。
「春太さんから誘われたの!」
「本当?ご飯とか?」
「そう!週末!」
だからそんなに嬉しそうな
顔してるんだ。
なるほど、なんて、
肩を下した時。
「明香は?あの後、どうなった?」
恐れていた事態になり。
大和と京也の視線が、
私に注がれた。
「や、あの後…は…」
「何?あの後って」
「隠し事はよくないよ、明香さん?」
分かってる。
分かってるんだけど。
「ま、いいわ。また帰り」
「ちゃんと教えてね。明香さん」
クラスの違う私と2人は、
少し気まずい空気を残して
それぞれの教室へ入って行った。