そこには、君が
手を離した大和は私の前を歩き、
辺りを見渡している。
私は断る理由もなくて、
少し後ろを歩いた。
「あれ、食いたい」
何の返事もしてない私を置いて、
大和はいい匂いのする方へ向かって行く。
そこには、“BIG肉まん”と書いてあり、
ほかほかした絵が暖簾に描かれていた。
惹かれる気持ちは分かる。
だってあんなに美味しそうな肉まん、
食べないでいられないもの。
「お姉さん2つください」
大和は店員さんをお姉さんと呼んだ。
見るからに気のいいお婆ちゃん。
大和は高齢の方の気を引くのが
上手いらしい。
お婆ちゃんは嬉しそうな顔をして、
1つ味違いでおまけしてくれた。
「高校生かい?」
「あ、はい。今修学旅行中で、」
そう言うとお婆ちゃんは頬を緩ませ、
私たちを交互に見ると。
「若いカップル見てると、嬉しくなるんだよ〜」
と、頷きながら笑っていた。
カップル、というワード。
実はこれが初めてではなくて、
色んな所で言われたりする。
お似合いだねとか、
可愛いねとか。
今まではそんなこと言われても、
何も思わず交わしていただけなのに。
「あ、カ…カップルじゃなくて、あの」
「仲良くしなさいね〜」
強制的に終了した会話。
肉まん代を大和が払ってくれる。
私は急いで財布を取り出して、
払うと申し伝えると。
「いらね」
たった一言返され、
代わりに私の口へ肉まんを
放り込んできた。
その流れでたこ焼きや焼きそばなど、
屋台で買いそうなものをたくさん買って、
近くに見えた公園に入ることにした。