そこには、君が
3日目。
今日の宿泊先は、
夜景がすごく綺麗で有名な施設。
行程の中身は見学などが多め。
夜の夜景を楽しみに、
昼間を過ごそうという算段だ。
「話長かったぁ」
「本当だね。途中寝ちゃいそうだった」
午前中は北海道で大きな会社の社長さんを中心に、
企業のあれこれを色んな角度から
お話してもらう時間だった。
正午はとっくに過ぎていて、
14時に差し掛かるところだ。
「きゃーー!!!!」
その時。
女子の悲鳴と共に、
怒鳴り声が聞こえてきた。
その声は、
私の耳に届いた瞬間に
誰のものがすぐ分かる。
「ねえ、この声…」
「絶対大和だ」
私は凛と顔を見合わせ、
声のする方へ走った。
絶対。
間違いない。
この怒った声は、大和だ。
群がっている場所へと走る。
そこにいる生徒たちを退けて、
先へ進むと、そこには
大和ともう1人男の子が睨み合っている。
正確には睨んでいるのは大和だけで、
対峙している相手はヘラヘラと笑っている。
「てめえ、もっかい言ってみろ」
「おー怖い、そんな怒んなって」
何度か殴られたのか、
大和の口の端は切れているようだ。
私は周りが一気に見えなくなって、
思わず名前を呼んでしまった。
「大和!」
すると、2人は一斉にこっちを見て、
相手の男子が一層笑って私を指差す。
「ほーら、彼女さんのお出ましじゃねえか!」
「てめえ何が言いてえんだ!」
大和は私とその男子生徒の視線の間に入り、
自分で私を見せないようにと遮った。
勢い余って大和に駆け寄ろうとした時、
後ろからそっと肩を叩き、
待ってろと言う声がした。
どこにいたのか、突然京也が現れ、
睨み合っている2人の元へと走って行った。