そこには、君が





部屋に入ってから、15分。


全然数分しか経っていないけど、


何時間も待たされている気分だ。


居ても立ってもいられず、


飲み物を買いに行こうと、


廊下にある自販機に向かった。


財布を持ち、カードキーも手に取った。


身軽なまま外に出ると、


自販機の前には数人の女子がいる。


そこにいたのは。







「あ!明香ちゃん!」







昨日同じ部屋だった女子たちだ。


何か様子がおかしい。


女子たちは私に駆け寄ってきた。








「どど、どうしたの?」







私が吃ってしまうくらい、


女子の勢いがすごかった。


圧倒される雰囲気にたじろぐも、


女子は私の言葉を待たずに話し始める。









「あの、昨日のこと本当に謝りたくて!」







「謝る?」







彼女たちは昨日の夜、


私に対して目一杯謝ってくれた。


そんなに謝らなくていいよと言ったほど、


めちゃくちゃ謝ってくれた。


なのに、まだ謝ろうと言うのか。








「本当、本当、永森くんに失礼だったなって!」






涙目の彼女たちに私は笑いかける。


どうしたのかと問うと、


ゆっくり説明をしてくれた。








「さっき永森くん喧嘩して先生たちに連れて行かれたでしょ?」






「あれ、永森くん全く悪くないの!」







大和の名前が出た。


私は何事かと真剣に耳を傾ける。









「永森くんの周りにいた男子が、茶化しててね。昨日棚橋とデートしてたのかーとか、棚橋って積極的なのかーとか。明香ちゃんをネタにしてたの!」







「でも永森くんは相手にしてなかったんだけど、そしたら相手が腹立てて、無視するなって怒って殴りかかったの!」







そんなこととは全く知らない私は、


喧嘩した理由さえ疑いもしなかった。








「でも永森くん、1回も手出さなくて!なんなら、明香ちゃんのことめちゃくちゃ守ってた!」







「明香の名前を呼ぶなって、怒ってた!もうすっごい格好良かったんだから!」







女子は話しながら、


めちゃくちゃウキウキしている。


まるで映画に出ているヒーローを見ているように、


目をキラキラさせていた。







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