そこには、君が
「え~、ごめん」
「いや、別にいいんだけどね」
お昼休み。
お弁当を食べながら、
朝のことを話す私と凛。
「何でも話してると思ってたからつい…」
「いつもなら話してるんだけどね」
どうして言おうとしなかったのか。
なぜかは私にも分からない。
「でも聞き出してきそうな雰囲気だったよね?」
「京也が、明香さんって言うの、拗ねてる時だから…聞いてくると思う」
憂鬱。
その言葉がぴったりで。
「でも上手くいってよかったね、凛」
「そうなの!でね、4人で遊ぶのもアリかなって…」
その言葉を聞いて、少し固まった。
4人ってのはきっと、
凛と柴崎さんと、
私と、それから徹平さん。
「でもせっかく2人で遊べるチャンスなのに」
「2人って、緊張しちゃって…どう?」
一瞬、迷った。
徹平さんに、もう1度会うことを。
きっと会えば、久しぶりって、
笑ってくれる。
だけど私は。
「ごめん。凛に内緒にしてたこと、あって」
決まった日の、数時間しか、
出会えないけれど。
それでも。
「私、好きな人…っていうか、気になる人が他にいて」
あの人を、
気にせずにはいられなくて。
「あの2人じゃなくて?」
「別の人」
それから私は、
どんな人かも分からない、
気になっている人のことを話した。
姿かたちも小さくて、声も名前も知らなくて。
だけど、すごく素敵な音を出す彼を、
私は求めていること。
全部話すと、凛は目を輝かせて、
ありがとうと言った。