そこには、君が






午後の授業が全て終わり、


掃除を済ませ、一斉下校。


ガヤガヤする中で自然に玄関へ向かう。







「永森くんたち発見〜!」






廊下を歩きながら、凛と一緒に大和たちを発見。


デカい男たちだからすぐ分かる。








「永森くん、もう帰るの?」






「ああ。お前らも?」






「んー、うん。まあそんな感じ」








自然に振る舞う凛と不自然な私。


京也が後から合流し、


凛と話している。







「凛ちゃん暇ならファミレス行かない?」






「あー、今日は用事あるの。また今度行こう?ね?」






「えー、まじかぁ。残念」







靴を履き替え、校門へ向かう中。


切り出しもごく自然に、話を進める。








「永森くん、明日何してんの?」






「ん?明日?」








息を呑んだ。


変な緊張が走る。


明日、の次に来る言葉はなんだろう。








「明日は、」







「天谷たちとカラオケって言ってたよな!」







「ああ、そうそう。カラオケ、他校の奴らと」








カラ、オケ…?








「そう、なんだ。了解で〜す…」








凛は私をチラッと見た。


私はバレないように首を振り、


もう詮索しなくて良いことを伝える。


凛も察したのか、それとなく別れの言葉を告げ、


校門を出たところで2人とは別方向へ向かった。








「ちょちょちょ、カラオケだって!ね、どういうこと!」






「待って。私の、誕…あれ、明日?明日だよね、それは間違い、ないけど…あれ、」








変な汗をかく。


あの時、修学旅行のあの時、


確かに大和は言ったよね。


空けとけって、言ってたよね…。








「ちょっと、私明日言っとこうか?」







「いやいい!全然いい!多分私の聞き間違いだから!」








聞き間違いなんかじゃない。


だけど、もしそうだったとしたら恥ずかしい。


自分たちからわざわざ誕生日だと聞いて、


祝ってもらっても嬉しくない。


それに、そんなのはいつものことだ。








「でも、」






「いや本当に!凛に祝ってもらっただけで充分幸せ!本当、ありがとう」







でもなんか今回は、


いつもとは少し違う。


喪失感で、埋め尽くされる。







「じゃあ明日一緒にご飯食べに行こうよ!」






「凛〜!ありがとう…」








毎年のことなのに、


期待していた自分がいた。


大和が何を思ってそう言ってきたのか


分からないけど、


何かを期待していた。


しすぎていたんだ。







< 211 / 325 >

この作品をシェア

pagetop