そこには、君が
午後の授業が全て終わり、
掃除を済ませ、一斉下校。
ガヤガヤする中で自然に玄関へ向かう。
「永森くんたち発見〜!」
廊下を歩きながら、凛と一緒に大和たちを発見。
デカい男たちだからすぐ分かる。
「永森くん、もう帰るの?」
「ああ。お前らも?」
「んー、うん。まあそんな感じ」
自然に振る舞う凛と不自然な私。
京也が後から合流し、
凛と話している。
「凛ちゃん暇ならファミレス行かない?」
「あー、今日は用事あるの。また今度行こう?ね?」
「えー、まじかぁ。残念」
靴を履き替え、校門へ向かう中。
切り出しもごく自然に、話を進める。
「永森くん、明日何してんの?」
「ん?明日?」
息を呑んだ。
変な緊張が走る。
明日、の次に来る言葉はなんだろう。
「明日は、」
「天谷たちとカラオケって言ってたよな!」
「ああ、そうそう。カラオケ、他校の奴らと」
カラ、オケ…?
「そう、なんだ。了解で〜す…」
凛は私をチラッと見た。
私はバレないように首を振り、
もう詮索しなくて良いことを伝える。
凛も察したのか、それとなく別れの言葉を告げ、
校門を出たところで2人とは別方向へ向かった。
「ちょちょちょ、カラオケだって!ね、どういうこと!」
「待って。私の、誕…あれ、明日?明日だよね、それは間違い、ないけど…あれ、」
変な汗をかく。
あの時、修学旅行のあの時、
確かに大和は言ったよね。
空けとけって、言ってたよね…。
「ちょっと、私明日言っとこうか?」
「いやいい!全然いい!多分私の聞き間違いだから!」
聞き間違いなんかじゃない。
だけど、もしそうだったとしたら恥ずかしい。
自分たちからわざわざ誕生日だと聞いて、
祝ってもらっても嬉しくない。
それに、そんなのはいつものことだ。
「でも、」
「いや本当に!凛に祝ってもらっただけで充分幸せ!本当、ありがとう」
でもなんか今回は、
いつもとは少し違う。
喪失感で、埋め尽くされる。
「じゃあ明日一緒にご飯食べに行こうよ!」
「凛〜!ありがとう…」
毎年のことなのに、
期待していた自分がいた。
大和が何を思ってそう言ってきたのか
分からないけど、
何かを期待していた。
しすぎていたんだ。