そこには、君が





家に帰ってからイライラして、


沸々と怒りが込み上げてきた。


空けとけって確実に言ったよね。


話があることまで、言ってたのに。


そう思いながら、窓際に座り、


カフェオレを一気に飲んだ。


窓を開け、遠くを見ながら、


音が聞こえないことに少し寂しくなった。


今日はいつもの日じゃないし、


最近音が聞こえないのも分かっていた。


だからなのか分からないけど、


寂しさが募った。







「明香!今日絶対焼肉ね!」






「肉!嬉しい!」







次の日、凛と朝からそんな話ばかりをした。


わざと大和たちの前で話をしてみたが、


気にする素振りも全っっっったく無く、


一言うるさいと言われる始末だ。







「明香、行こっ」







「うん…」







それでも期待は拭えなくて、


目の前を通る大和を見て私は足を止めた。


京也はじゃあねと凛に笑顔を向けている。


大和は私を流し目で見て、


軽く手でじゃあなと言った。







「ね、大和…あの、」






思わず呼び止めた。


自分でも無意識ではあったが、


呼ばずにはいられなかった。









「カラオケ、行く…んだよね?」







分かってる風に言ってるつもりで、


あえてそんな言い方をしてみた。


大和は、当然だろと言いたげな顔で、


頷く。







「来んなよ、お前ら」







その言い方が、


無性に腹立った。


なんなの、この男。








「一生歌ってろ!!!」






「っ…痛ってええええ!!!!」






私は思い切り、ありったけの力で、


大和のスネを蹴った。


痛がる大和をみんなが知り、


何事かと様子を見ている。


私は駆け寄る京也に、


退けと一言言って教室を出た。


凛は笑って後をついてきて、


最高と肩を揺らいている。


何が来んなよ。


行ってもやらないわ。


この苛立ちを持ったまま焼肉屋へ。


肉が焼けるのと比例して、


お腹が満たされると同時に


気持ちも落ち着いて行ったのだった。







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