そこには、君が
「はーい」
何食わぬ顔で表に出た。
何も考えていない顔で、出迎えた。
大和は肩を揺らし、息を整えながら、
玄関に入ってきた。
「大和…、疲れてる…ね、」
なんでこんな間抜けなことしか言えないんだと、
自分を責めたがもう遅い。
息を整えた大和が顔を上げた時、
今から怒りますみたいな顔をしているのが分かった。
「お前、なんで今日が誕生日だって言わねえんだよ!」
「だってそんなの、毎年言ったことなかったし…」
「そういう問題じゃねえんだよ!誕生日空けとけって、前に言ったろ!」
「い、言ってたけど、勘違いかなって思って…」
大和が私の頬を掴み、
怒っていることを示している。
私は怒られたことを不服に思いながらも、
言われるがまま話を聞いた。
「…いやそもそも勘違いしてた。日曜日だと思って京也に言ったら、いや違うよって簡単に言いやがったあいつ」
いやその前に、京也だって、
おめでとうの一言もなかったけどね。
「それで走って来てくれたの?」
そう聞くと、肯定を表すかのように頷いた。
下を見ると、大和の手には、
くしゃくしゃの紙袋がある。
それを少しの沈黙の後、
私の前に差し出した。
「…くれるの?」
「ああ。プレゼントだ。やる」
どこかで買ったパンか何かかな。
駄菓子屋さんってこともあるかもな。
さすがにケーキだったら、
この状態じゃ崩れてるだろうな。
そう思いながら、中を見ると。
「これ…、」
「見ていいぞ」
くしゃくしゃの紙袋の中には、
黒くて薄い長方形の箱が存在した。
箱には何も書いていないが、
それだけで重厚感がある。
「何入ってるの?」
「見てみろ」
見たいんだけど、
手が怯えてますって言っている。
きっとこの中には、
何か素敵なものが入っているんだけど、
分かっているんだけど、
なかなか手が付けられない。