そこには、君が
「ちょ、待って…」
何がしたいのか分からず、
急いで財布と携帯を持ち、
鍵をかけた。
大和は一切こっちを見ず、
エレベーターの中でも無言だ。
変な緊張感がある。
というより、大和がおかしい。
こんな大和は初めてだ。
「ここ…?」
大和が足を止めたから、
目的地に着いたことは分かる。
ここは、いつも私が
部屋から眺めていた公園だ。
私の大好きな音が鳴る場所だ。
「大和、公園に用事?」
「明香」
緊張感がより一層増した。
大和が私の名前を呼んだ。
いつになく真剣な様子だ。
「今から恥ずかしいこと言うから」
「恥ずかしいこと?」
「俺にとっちゃ恥ずかしいこと。笑ってもいいから、最後まで聞いてくれ」
何が始まるというのだろうか。
私はこれから起こることが読めず、
変にドキドキする。
大和にとって恥ずかしいことを、
わざわざこの場所に来て言うことに、
何の意味があるんだろう。
大和は大きく深呼吸をすると。
意を決したかのように、私をじっと見つめ、
息をゆっくり吐いた。
「俺には3つの趣味がある」
知ってたか?と聞かれ、首を横に振る。
そもそも大和に、趣味があったことに、
驚きを隠せない。
「まあ3つも趣味があるのは、ある女のせいなんだけど」
ある女、と言った。
大和が女の子の話をすることもまた、
驚きの1つだ。
「ある時、その女がバスケをしている男を好きだと言ってて、」
それをすればこっちに振り向くと思った。
そう言う大和は、ずっと私を見ている。
大和でも、振り向かせようとした女の子が
いるんだな、と初めて知った。
「小学校の頃、それに熱中してクラブチームにも入ったんだ」
そういえば急に、
バスケチームに入るとか言ってて、
夜急いで帰ったりしていた時期もあったっけ。
懐かしい気持ちになり、
それが女の子の影響なのだと思うと、
少し面白くなった。