そこには、君が
でもさ、と。
少し声色を変えて、
私から視線を外し下を見た。
「想定外のことが起きた」
その女の人は、
今度はテレビに映るスケボー選手を見て
この人と付き合いたいと言い出したらしい。
そういえば中学上がってすぐの頃、
現役高校生がスケボーで世界1位になった。
その時、私も大和に、その女の子と
同じことを言ってたかもしれないな。
一時期、その選手のことばっかり、
テレビで見てたっけ。
「結局バスケの時と一緒で。すかさずスケボーをすれば、こっちを見ると思った」
「スケボーやってたの、知らなかった」
バスケに続き、スケボー。
そしてこの場所。
大和が言う真剣な話に耳を傾ける最中、
ふと頭に過ぎった。
私は、いつも同じ時間に、
ボールの音やタイヤの擦れる音を
聞いていた。
私を癒し、包み込んでくれる、音たちだ。
「それで、どうなったの?」
そう尋ねて、私も昔を思い返す。
私は、スケボーの選手の次に、
あるドラマを見て、ハマったものがある。
その主人公は目が見えなくて、
それでも唯一の才能で名を轟かせるんだ。
その才能は、絶対音感ってやつで。
「スケボーの次は、音楽だった」
まさかと思ったけれど、
私の昔とリンクする部分がある。
偶然だと思うけど、
その主人公が楽器を弾いている姿が、
何より格好良いと思ったあの頃。
喧嘩ばかりしていた大和に、
少しでも喧嘩を辞めて欲しくて、
楽器吹いてよ、なんて言ったことがある。
「楽器なんてやったことねえけど、たまたま親父が持っていたサックス借りてさ。独学で吹きまくった」
話の終わりはまだ見えていない。
だけどこの話が、
私に何かを伝えていることは分かる。