そこには、君が
「俺は、ずっと待ってた」
大和はチラッと携帯に目をやり、
小さな声で間に合ったと言った。
釣られて私も携帯に目をやると、
時間は23:43。
今日が終わるまで、
あと17分。
「お前が誰を好きだろうと、関係ない」
もう幼馴染ではいられない。
大和はそう言って私の手を離し、
少し距離を取って立つと。
「ずっと好きだった」
そう言った。
夢だと思った。
大和は言葉を止めず、
私に手を差し出し、
頭を下げ。
「絶対守る。幸せにするから。俺と付き合ってください」
男らしく、まっすぐ、
告白してくれた。
ずっと私のそばにいた大和が、
私を好きだったという事実に、
驚きを隠せない。
だけど、それより、
私も伝えなきゃと思った。
「大和、顔上げて?」
私は私なりに、
言わなきゃいけないことがある。
というより、伝えたい。
「私の話聞いて」
断られると思っているのか、
大和は体は起こしたものの、
顔を一切上げない。
まあいいか、と話を進めることにした。
「私ね、ずっとずっと前から好きな人がいたの」
思い出して噛み締めるように言葉にする。
頭の中には、大好きな音が響いている気がした。
「私の部屋からこの公園が見えるんだけど、そこから見える人が3つの音を奏でていてね」
寂しい時も、悲しい時も、
あの夜のあの瞬間が私を包んでくれていた。
誰だか分からない人に恋するなんて、
馬鹿げていると人は言うと思うけど。
そんなのどうだって良かったんだ。
「私はずっとその音に救われてた。気付けば好きになってたんだ」
今、真実を知った。
その音を奏でていた人が、
大和だと知った。
もう私に怖いものはない。
「だから、きっと、私が好きなその人は、えっと…大和だったって、こと…?だよね?あの…、」
次になんて伝えよう。
そう思って、おどおどしている私を。
「もう、いい」
大和は何も言わずに、
強く私を自分の方に引っ張った。
大きな手で、大きな体で。
私を抱きしめた。