そこには、君が
その日から数日経った。
あの後、ご飯を食べながら、
凛の話をとことん聞いた。
何も確証が得られないままだったけど、
結論から言えば凛は彼氏のことを
まだ好きなようだった。
「腹減った」
「さっき食べたじゃん」
学校からの帰り道。
今日は用事があると言う凛と別れ、
私は大和と夕飯を食べに行った。
いつも行くファミレスで、
飽きるほどのパスタを食べ、
家へ向かっている時のこと。
「ん、電話?」
ポケットから着信音が聞こえ、
誰からの電話か予想がつかず携帯を取り出す。
凛からの着信だ。
嫌か予感がした。
「もしもし?凛、どうし…」
『明香ぁ…浮気、してたぁ』
「え?何?どういうこと?」
隣で大和が心配そうに見つめている。
口パクで凛と伝えると、
余計に心配そうにしている。
「凛、落ち着いて。今、どこ?」
『春太の、barの前…』
「今から行くから、待ってて!」
勢いで電話を切る。
「凛、何だって?」
「分かんない。でも泣いてた。私、行ってくるね」
あのbarは、徹平と別れて以来、
行ってもいない。
だけど何となくだけど、
あの場所に大和を連れて行きたくない。
「待て。俺も行く」
「ううん、大丈夫。会えたらすぐ連絡するから、家で待ってて?」
暴君は強引だから、
いつもならお構いなしに着いてくる。
だけど彼氏になってからというもの、
私の言うことを素直に聞いてくれる
優しい暴君になった。
「気をつけろ」
「うん!ありがと」
名残惜しく手を離すと、
私は一目散にbarへ走った。
凛は彼氏が浮気をしていたと言った。
あの、春太さんが?
優しくて責任感のある春太さんが、
浮気なんかするはずない。
そう思いながら、
一心不乱にbarへ向かった。