そこには、君が
『発展しすぎでしょう。まあでも、仲良かったしね』
「いや自分でもびっくりしてるからね」
小さな頃からの大和を知っているだけに、
余計恥ずかしくてたまらない。
そんな私をよそに、
母親は嬉しそうにはしゃいでいる。
『大和が彼氏ね〜。いいんじゃない?大歓迎よ』
彼氏の話なんて初めてしたけど、
意外とあっさり受け入れられたものだな。
それにも驚きながら、
今日電話をした目的の2つ目の話題へ。
「それでね、進路のことなんだけど」
『あ、それね。お母さんも言おうと思ってたんだけど、』
母親の電話の向こうで、
英語で話す人たちの声が聞こえる。
流暢な言葉が私の感性をくすぐり、
やっぱり英語が話せるようになりたいと、
強く感じた。
「留学の件さ、」
もうちょっと考えたい、って。
そう言おうと思っていた。
正確には行くつもりだけど、
まだ心の準備が出来ていない。
大和に相談したりして、
決心してから決めよう、って。
そう思っていた、けれど。
『もう手続き済ませてるわよ』
「…え、手続き?」
『うん、あとお金支払うだけ。知り合いの学校だから、上手いことしてもらってるわ』
あ…そう。
もう何も言えなくなって、
黙り込んだ。
上手くしてもらっているのか。
こうして私は、
母親の気遣いによって、
進路が決定した。
来年から、留学することになった。
『また色々証明書とか必要になると思うから、メールするわね』
「あ、うん…ありがとう」
仕事だから、という母親に礼を言い、
電話を切った。
もっと早く言えば良かった。
悩んでいる、って。
言えば良かった。
今更少し後悔しつつ、
色んな焦りが募ってきた。
とりあえず大和に言わなきゃ。
凛にも、京也にだって。
何から優先してやるべきか分からず、
いつまで経っても眠りにつけなかった。