そこには、君が
それから1週間が経ち。
言おう言おうと思いつつも、
なかなか言い出せず、
時間だけが過ぎていった。
週末の金曜日。
帰宅した直後に、電話が鳴った。
「あれ、何だろ…」
今日はこの後、19時頃から
大和と京也、凛も誘って、
夕飯を食べに行く予定だ。
それまで寝ると言って帰って行ったのに、
すぐに電話をかけてくるなんて。
さては、お菓子買ってきてとか、
そんなことだろう。
私はそんな風に呑気な考えで、
携帯を耳に当てた。
「もしもー…、」
『今すぐ来い』
「…え、どうした、」
さっきまで何もなかったのに、
めちゃくちゃ怒っている様子。
第一声に来いって、
よほど怒っているのが浮かぶ。
なんで?なんかした?
『どうしたじゃねえ。とにかく来い』
「うん…行く、」
いつもの感じでもない。
とにかく機嫌が悪いようだ。
心当たりが全くない私は、
頭にハテナを浮かべながら大和の家へ向かった。
インターホンを押すまでもないか、とドアを
開けると、大和の靴以外ない。
きっと誰もいないんだ。
「お邪魔しまーす、」
本当は内心、行きたくない。
怒っている時の大和の機嫌の直し方は、
長年一緒にいる私にも難しい。
「入るよー?」
一応声をかけて部屋の扉を開くと、
ベッドの上に胡座をかいて、
ブチギレている表情の大和がいた。
「そこに座れ」
そこって、どこよ。
なんて屁理屈言える雰囲気ではなくて、
私はとりあえずドアの前に正座した。
少しの沈黙が、何時間にも感じ、
私から口を開くことが出来なかった。
「お前、なんか言うことあんじゃねえの?」
「言うこと…」
思いつくのは、留学の話。
それが頭に出てきて、
何となく結びついた。
「お前、留学することになってるらしいな」
ばばあから聞いた、と言った。