そこには、君が






大和はいつもそう。


怒ると投げたり蹴ったり壊したり。


不器用だから、そんなことでしか、


感情を表現出来なくて。


だけど、間違わない人だから。


喧嘩はよくしちゃうけど、


自分からは手は出さないし、


弱い人を守ろうとする。


曲がったことは大嫌い。


嘘も裏切りも大嫌いな人。





「凛ちゃん、ごめんね」





京也は凛に謝りながら、


自然に私の横にしゃがみ込む。


そして優しく頬に触れ。






「もう、ばかだな」





って言いながら、


涙を拭いてくれた。


罪悪感から流れる涙。


本当はもっと何でも言えるのに。


素直になれないと、もうだめで。


いつも大和を怒らせて、困らせて。


最後は京也が慰めてくれて、


ちゃんと怒ってくれる。






「明香、泣くなよ」




「きょ…、や…」




「大和に謝んなきゃだめだよ?分かった?」





こくりと頷く。


こんなこと、何回目だろうか。






「凛ちゃん、まだ明るいし、帰れるかな?」





「うん。明香送って帰る」





俺、大和の所行ってくる。


京也はそう言い残すと、


自分のポケットから飴を取り出し、


凛に渡した。






「凛ちゃんの分と明香の。泣き止んだらあげて」





「分かった」





じゃあね、おばかさん。


そう言い残して、


京也は急ぎ足でお店を出て行った。






「凛…ごめんね」





ほぼ泣き止んだ私は、


大和の投げたメニュー表を拾うため、


床に膝を付いた。






「私のせいだよね、嘘付いちゃって」





「違うよ。凛が言わなくても、私が嘘付いてた」






申し訳なさそうにする凛に、


また申し訳なくなってしまう。


私っていつもそう。


すぐに人を困らせる。





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