そこには、君が
「もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「言おうと思ってたんだけど、なかなか…」
気まずそうにする私を、
必死にフォローしてくれる凛。
京也は凛にどこか弱いのか、
押される圧に負けていた。
「大和、めちゃくちゃキレてるよ」
「いやそうだろうね。聞いてるだけの私でも想像つくもん」
2人にそう言われると、
また更に大和への申し訳なさが募る。
「大和くんも、理解したいはずだけど。ね…、」
「あー…言わないでおこうと思ったけど、救済措置だよなこれ、」
急に自問自答し始めた京也。
「何それ。救済措置?」
「え!教えてあげてよ!」
この状況を助けることが、
京也に出来るのか。
半信半疑なまま、言葉を待つと。
「あ、その前に条件!」
ここぞとばかりに手を挙げると。
凛の方を向いて一言。
「何で大和のこと、名前で呼んでんの」
「…っへ、待って私に矢印向くの?」
凛は急な言葉に動揺。
別に理由なんてない、と言った。
「ずるい。俺も、名前がいい」
「ちょっと待って!私に条件出すの?違くない?」
「違わない。呼ぶって約束して」
京也が、自分の持てる力を全部出している。
きっとチャンスだと思ったんだろうな。
私は少し可笑しくなって、笑いを堪えた。
2人が、なんだか可愛い。
「明香、助けて…」
「いいじゃん。呼んであげてよ」
私と京也、両方に詰め寄られ、
凛は顔を真っ赤にする。
もう逃げられなくなった凛は。
「ぜ、善処します…」
「よし、約束ね」
とてつもなく嬉しそうな京也の笑顔に、
何だか凛への想いが見えた気がした。
こんな表情、見たことがない。
「分かったから、早く救済措置出してあげなよ」
「あ、そうだった」
京也は立ち上がると、
自分の荷物を持ち。
「大和さ、」
爆弾を残して、大和の家へ向かって行った。