そこには、君が






「もっと早く言ってくれれば良かったのに」






「言おうと思ってたんだけど、なかなか…」







気まずそうにする私を、


必死にフォローしてくれる凛。


京也は凛にどこか弱いのか、


押される圧に負けていた。







「大和、めちゃくちゃキレてるよ」






「いやそうだろうね。聞いてるだけの私でも想像つくもん」







2人にそう言われると、


また更に大和への申し訳なさが募る。








「大和くんも、理解したいはずだけど。ね…、」






「あー…言わないでおこうと思ったけど、救済措置だよなこれ、」







急に自問自答し始めた京也。






「何それ。救済措置?」






「え!教えてあげてよ!」






この状況を助けることが、


京也に出来るのか。


半信半疑なまま、言葉を待つと。







「あ、その前に条件!」






ここぞとばかりに手を挙げると。


凛の方を向いて一言。







「何で大和のこと、名前で呼んでんの」






「…っへ、待って私に矢印向くの?」







凛は急な言葉に動揺。


別に理由なんてない、と言った。







「ずるい。俺も、名前がいい」






「ちょっと待って!私に条件出すの?違くない?」






「違わない。呼ぶって約束して」







京也が、自分の持てる力を全部出している。


きっとチャンスだと思ったんだろうな。


私は少し可笑しくなって、笑いを堪えた。


2人が、なんだか可愛い。







「明香、助けて…」






「いいじゃん。呼んであげてよ」






私と京也、両方に詰め寄られ、


凛は顔を真っ赤にする。


もう逃げられなくなった凛は。







「ぜ、善処します…」






「よし、約束ね」







とてつもなく嬉しそうな京也の笑顔に、


何だか凛への想いが見えた気がした。


こんな表情、見たことがない。







「分かったから、早く救済措置出してあげなよ」






「あ、そうだった」







京也は立ち上がると、


自分の荷物を持ち。







「大和さ、」






爆弾を残して、大和の家へ向かって行った。








< 241 / 325 >

この作品をシェア

pagetop