そこには、君が
「卒業したら、同棲しようと思ってたんだって」
聞き慣れないワードに、思考が固まる。
凛も同じようで、黙り込んだ2人を残して、
京也は家を出て行った。
初めて聞くその言葉を考えているうちに、
段々と息ができるようになった。
「今、すごいこと、言ってたよね…?」
「同…棲、?」
あの大和が、そんなことを、
密かに考えていた。
私はそんなこと知らないし、
何も考えたこともない。
「えー!待って!大和くん、カッコ良すぎるでしょ!」
凛が騒ぎながら部屋の中を彷徨く。
私はもう限界だった。
涙が止まらない。
「何が、救済措置だよ、…っ」
「それだけ真剣だからこそ、怒ってるんだよって。そう言いたいんじゃない?」
分かる。
もう痛いほど、分かる。
大和がそんなこと考えてくれてるなんて、
微塵も思わなかった。
「良かったね、明香!」
私はひとしきり泣いた。
離れることの寂しさへも涙が溢れるし、
大和が考えてくれてた思いにも涙腺が弱まる。
ちゃんと明日謝らなきゃ。
「じゃあ、ちゃんと目冷やしなね?」
「うん、今日はありがとう」
泣き腫らした目をアイスノンで冷やし、
京也が帰るタイミングで送り出した。
本当は今すぐ会いたいけれど、
こんな腫れた目じゃ会えない。
そう思いながら、目を極力冷やした。
お風呂を済ませ、再び冷やしながら数分後。
私は眠りについた。
気が抜けたのか、意識が遠のいていく。
いつもなら夕飯時の時間に寝たせいか、
いつもより早く目が覚め、身支度をすることに。
登校時間まで1時間ある、その時。
インターホンが鳴った。