そこには、君が
「でもまずは不動産業に勤めて、色んな知識を深めたい」
「ちゃんと道筋出来てたんだね」
大和が、作業着って、
似合いすぎでしょ。
「あと、…まあ照れくさいけど、」
怒った理由、と。
頭を掻きながら顔を赤らめ。
「俺バイトしたお金が溜まったから、1月から実家出ようと思ってて」
大和は、少しの時間でもバイトをしていた。
休日に朝から晩まで働きに行っていたこともある。
それにいつも余裕そうで、
どこに行っても奢ってくれようとしていた。
「その時、お前が…あの、」
「ん?」
大和は口ごもりながら、
私から自分の身を離すと。
いつになく真剣な目をして。
口を開いた。
「一緒に住もうって、言おうと思ってた」
「一緒に、って…」
昨日の京也の言葉が出てくる。
卒業したら同棲しようと思ってたらしい、と。
あれが現実になり、
その時に溢れた感情が、
また大きくなる。
「知らな…かった、」
「ああ。だから言ってねえのに、俺勝手にキレて。振り回したんだ」
すごく反省している大和を、
もう見ていられなくて、
今度は自分から飛び込んだ。
涙も止まんないし、ドキドキも早るばかり。
「留学の話、素直に応援する」
「ほ…んと…?」
「ああ、だからって離してやんねえぞからな」
この人の腕の中にいるのが、
私で良かった。
私を抱きしめているのが、
大和で本当に良かったと、
心の底から思う。
「お前が出発するまで、一緒にいてくんね?」
「一緒に?」
「そう。1月から住む家で、2人で暮らそう」
「いい、の…?」
夢のような話を、
あたかも当然かのように話している大和。
私はもう目の前がぼやけて大変だというのに。
「日本戻ってきたら、また一緒に住めばいい話だろ」
「そんな簡単に…、」
「俺とずっといてくれ」
それってもう、プロポーズじゃない。
私はもう言葉にならなくて、
思い切り頷いた。
抱きしめる力が強まると同時に、
心がふわふわと浮いているようだった。
「好きだ、明香」
もう体も浮いちゃうんじゃないかってくらい、
抱きしめられると、少しお互いを見つめて、
優しいキスをした。
「夏休み中、旅行にでも行くか」
「うん行く。絶対行く」
大和なりの優しさが全部愛しい。
彼の想いが全部伝わって、
私の想いも大きくなった。