そこには、君が
今日は変に緊張している。
1泊2日。
今まで何度だって大和と同じ空間で、
同じベッドで過ごしたことがある。
そういえばキスもされたこともある。
だけど、付き合ってからまだ一度も、
一緒に寝ることはしていない。
何かが起こる訳ではないかもしれないけれど、
私は勝手に身構えていた。
「めちゃくちゃ楽しみすぎる!」
「急ぎすぎだ、ばか」
電車に乗ってまず着いた場所は遊園地。
ずっと行きたかった場所に、
大和と恋人として訪れた。
宿泊の大荷物はロッカーに預け、
チケットを買う。
本当は朝一でと思ってはいたが、
大和に即却下された。
朝は眠いんだとか。
「何から乗る?」
「あれ」
やけにスムーズに歩くなと思っていたが、
目的地を指差され、少し膝が震える。
園最大のジェットコースターは、
ここの名物とも言われている。
確かに乗りたいとは思っていたけど、
1番初めに乗るとは想定外。
「まじ?」
「当たり前。準備運動だろ」
準備運動を履き違えている男に
何を言っても虚しく、
強制的に列に並ぶことになった。
今までの大和なら、
長時間待つとか絶対しなかったのに、
文句一つ言わず、自ら乗り気で並んでいる。
不思議なことも起こるもんだ。
「ぜぜぜぜ、絶対手離さないでよっ!」
「さあな。知らね」
意地の悪い顔で私の手を離す。
必死に掴もうとしている私を、
楽しんで見ているようだ。
「悪魔だ」
「言ってろ」
座席に座り、シートベルトをはめられる。
従業員のお姉さんの合図で動き出したコースターは、
あっという間に速度を増し、
私に悲鳴すら上げさせずに終えた。
スタート地点だったところに、
髪がボサボサのまま戻った私を見た大和は、
見かねたのか整えてくれる優しさを見せる。