そこには、君が
「怖かった…死ぬかと思った」
「待ってろ」
大和は死にかけた私をベンチに残し、
颯爽とどこかへ消えていく。
5分経って戻ってきた大和の手には、
冷たい飲み物が握られていた。
「ん。飲め」
「あ、ありがとう」
冷たい飲料水が私の酔いを覚ます。
これが大和の言う、準備運動とやらか。
「なんか買い物したいんだろ」
「そう!よく覚えてたね」
お土産はどこでも買えるけど、
ここでしか買えないものもある。
彼氏とのお揃いの物をつけるのが、
憧れだった私。
「これ可愛い!」
「ね、見て大和!」
「これ買おうかなぁ」
色んな種類があるキーホルダーを選び、
どうかと大和に勧める。
大和は首を傾げるか、知らん顔するだけで、
何も賛同してくれない。
「好きなの買えばいいだろ」
「それじゃ意味ないじゃん」
私が良いと思っても、
大和も気に入らないことには
全く意味がない。
そんなこと、暴君に分かる訳ないんだけど。
「何でもいいだろ、んなの」
「良くないんだよ、ばか男」
は?と不機嫌そうに私に近付く。
私が気に入らない顔をしていることには、
少し気付いているようだ。
いつもより対応が甘いから。
「何だよ、言えよ」
「もういいよ、買わないです」
拗ねてやる。
私は思い切りそっぽ向いて店の外へ出ようと。
「待てって」
した。
が、虚しく。
大和に引っ張られ、阻止される。
「何怒ってんだよ、なあ」
本当に分からなさそうな表情に、
私もどう言っていいか分からず。
「せっかくのデートだったから、」
考えてはみたけど、
この人に遠回しの言い方をしても、
通じないと判断。