そこには、君が





「お揃い、買いたかったの」






もう買わないけど。


最後に意地だけ張ってみる。


買いたい、だなんて。


もう恥ずかしすぎて顔が上げられない。








「まじお前無理」






大和はそう言って、


店内であることも忘れたのか、


私を抱きしめた。


それもありったけの力で、


自分に埋めるようにして。







「買おう。ごめん気付かなくて」







「…うんいいよ」







いいよ、だなんて。


自分から言い出しておいて、


大和に賛同するみたいな形をわざとに取る。


買うことになってからは、


さっきとはまるで違う人のように


大和から積極的に動いてくれた。


結局はお互いの意見が合わずに、


辞めるかどうかまで悩み始めた時。


ふと目に止まった、シンプルな石のキーホルダー。


綺麗な色の石がついていて、


男女で持てそうなモチーフ。








「これがいい」






そう言うと、大和は心なしか


嬉しそうな顔をして、


2つ手に取った。


ちゃんと私の好きな白が入っている物を手に取り、


おそらく自分の好きな色である青を選んだのだろう。


大和はお会計を済ませるため、レジに行くと、


今すぐ付けるからと袋から中身を


出してもらっていた。








「ん」






「ありがとう」






大和は何も言わず、


財布のチャックに付けた。


それを見て、私も財布に付けることに。







「可愛いこれ」






ね。


と大和を見上げると、


こっちを見ながら口角を上げて、


私の前髪をくしゃっとした。







「腹減ったから飯食わね?」






「さっきも食べたじゃん」







「さっきはさっき。ほら、行くぞ」







旅行1日目の遊園地は、


乗り物に飽きるまで乗り、


食べたい物をたらふく食べ、


満足満喫したデートとなった。








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