そこには、君が
「帰れる?」
「大丈夫」
「着いたら連絡してね?」
「分かった」
凛と2人で帰る時に、
いつもばいばいする所でばいばい。
京也にもらった私の分の飴を片手に、
凛にばいばいした。
大和は今何してるんだろう。
京也は大和を見つけ出せたかな。
そんなことをぐるぐる考えながら、
家の中に入った。
ご飯の準備をしながら、思い出す。
初めて大和が怒ったのは、
確か中学1年生の時。
友だちに言われた一言が嫌で、
だけど喧嘩したくないからって
黙り込んでたら、言わないと伝わらないって
真剣に怒ってくれた。
次がお母さんにひどいことを言った私に、
ちゃんと謝ってこいって怒った。
それから、体調が良くないのに、
我慢してたこととか。
忘れ物をして借りに行かなかった時とか。
授業が嫌で、ずる休みした時とか。
小さなことも大きなことも、
私が間違った時には側にいてくれた。
京也は、大和が怒る度に私を慰め、
だけど優しい言葉でもう1度怒ってくれる。
そんな2人なのに。
いつも意地を張って、強がって。
だめだと分かっているのに、
思ってもないことを言う。
本当は素直に、ごめんねって言いたい。
本当は言いたいのに。
「ロコ、待っててね」
最近寒さが際立ってきて、
マフラーを離せなくなった。
外に出れば、白い息。
ふうっと手に息をかける。
いつも家を出るタイミングで、
聞こえてくる足音が。
今日は聞こえてこない。