そこには、君が






「到着」






「豪華すぎる…」






今日泊まるらしい旅館に到着。


全部大和が立てた計画のもと動いているので、


私にはどれも新鮮な景色だ。







「ご予約のお客様でしょうか?」







「永森です」






笑顔の可愛い女将さんが、


入り口でお出迎えしてくれる。


外にライトアップも綺麗だったが、


中も豪勢な造りで、圧巻だ。


所々に使われている金箔が上品さを出し、


厳かな雰囲気もなんとも言えない味わいだった。







「ご案内いたします」






誘導について行く、


辿り着いたのは百合の間。


膝を付き、戸を開けてくれる所作が


何とも美しい。







「ご夕食はすぐにご用意してよろしいでしょうか」






「お願いします」







ただいまお持ちいたします。


そう言って静かに女将さんが去ったのをいいことに、


私は大はしゃぎした。


だってこんな豪華な旅館に来たのなんて、


生まれて初めてだし。


部屋から窓を見ると、そこには露天風呂があり、


その奥には水平線が彼方にあった。







「これ、雑誌に載ってた」





「これは売りに出来るよ!すごいもん」







ここに連れて来ようと、


ちゃんと調べてくれていたのかと思うと、


もうそれだけで胸熱だ。


2人で景色を眺めていると、


さっき言われた通り、


旅館の方が夕食を運んできてくれた。


懐石料理と言うのだろうか。


お造りに前菜、小さな鍋まで、


数多くのメニューが届いた。







「いただきます!」






天国だ。


毎日自分で作ったり、


買ったお惣菜を食べている身からすれば、


もう召されるお味だ。


幸せの絶頂を味わっているのは私だけではなく、


大和も同じようだ。


さっきから一言も話さない。








「美味しい?」






「美味い」






言葉は多く言わないものの、


手を休めようとしないのを見ると、


本当に美味しいだろう。


ただこの人は、味わうことは知らないようで、


1つ1つの美しさや彩りなんかは、


特に気に留めていないようだ。







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