そこには、君が





「少し気になって」




そう言いながらわざと詰め寄り、


少し手を突いてみる。


大和は避けはしないものの、


耳まで真っ赤にしていた。







「んー、分かんね」






「…真剣に聞いてるのに」






はぐらかされて、拗ねる自分。


すると大和は少し笑って。







「じゃあお前は?」






そう言った。


まさかそんなこと聞いてくると


思わなかった。







「強い所と、弱い所」






自分でも驚いた。


大和のどこが好きかなんて、


スラスラ出てくる。







「飯作れとか、すぐ来いとか1人じゃ何もできない癖に、人を守るために体を張ったり、自分を犠牲にしてでも相手を守ったり」





大和のいい所がどんどん出てくる。


私だけが知っている大和の、


ほんのちょっぴり可愛い所。






「絶対1人じゃ生きていけないし、無人島なんか行ったら即死する人だと思うけど、」





実際どうにでもなることを、


わざわざ頼ってしか生きないのは、


それはそれで大和の甘えだから。






「かと思ったら、困ってる人放って置けないし、私なんかのために体張って頭まで下げてさ、」





周りには誤解されやすい人だけど、


本当はたくさんの良い所を持っている。





「暴君だし、もうどうしようもない時もあるけど」





自分で口にしていて、つくづく思う。


あぁ、こんなに好きになっていたなんてって。






「何だか、あー好きだなあって、そう…」






と、言いかけて。






「明香」






急に向こうを向かされて。


大和の大きな腕で、


後ろから抱きしめられた。







「ちょっとっ…ばか、向こう向いててって言ったでしょっ、ねえっ」







「無理、限界」







いつもより近い気がする。


だって触れ合っているのは、


肌と肌。








「お前ふざけたこと聞くな」






「え…?」






大和が耳元で囁く。


少し動けば水音。


艶かしい、肌音まで聞こえる。







「んっ…ちょっと、」






大和が急に黙ったと思えば、


突然私の首筋に大和の息がかかり。


気付けば耳の後ろにキスをしている。


そこに初めてキスをされた私は、


無言ではいられない。







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