そこには、君が





次の日の朝は部屋に運ばれた朝食を、


2人眠い目を擦りながらいただいた。


支度を済ませ、旅館を後にすると、


また大和の計画の通りに観光した。


凛にも京也にもお土産を買い、


満足した旅行となった。






「早くお土産渡したいな」



「写真撮ったやつ、後で送るね」



「お腹空いちゃった」






楽しい時間はあっという間。


もうすぐ家に着く。


名残惜しいのは私だけのようで、


口数が一向に多くなる。


終わることを考えたくなくて、


思い出を振り返るかのように、


ずっと話し続けている。






「今日、テレビで映画やるらしいよ」





「ん」





「前に見たいって、言ってたやつだよね?」





「あーうん、」






素っ気ない態度の大和。


無愛想なのは前からだけど、


ここまでくると、逆に寂しい。


帰るのは分かっているし、


それは当たり前なんだけど。






「着いちゃった、ね…」





「ん、荷物」





「ありがと、」






私の分の手荷物も少し持っていてくれて、


家の前で渡される。


あっさりな別れ際に戸惑う私。


寂しいって、言いたいけど…。







「あ、あの…もう、帰るよね?」






「……、」






溜め息を吐く大和は、


急に自分の髪をくしゃくしゃと


掻き乱し。






「まじで縛るぞお前」





「へっ…、」






そう言うと大和は私を引っ張り、


強引にキスをしてきた。


何も言わせないように、


甘くて強いキス。






「ずっと好きだった奴と一緒にいて、帰りてえわけないだろうが」






「…や、まと」






「今一緒に居たら、まためちゃくちゃにしてしまうから、って。それくらい気付けばか」






顔を真っ赤にして、そう言った。


なんだ。名残惜しいのは、


私だけじゃなかったんだ。







「めちゃくちゃに…って、え!」






「今日は勘弁してやるけど、」






落とした荷物を全部拾うと。






「お前がそんななら、次から容赦しねえから」






覚悟しとけ。


そう言って大和は顔だけ近付け、


もう一度キスをし、


じゃあなと家に帰って行った。






「もう…持たないよ、」





胸がドキドキを超えてバクバクしている。


大和によって翻弄された私は、


しばらくその場から動けないでいるのだった。








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