そこには、君が
教室に着いたのが5限目ギリギリで、
誰とも話すことが出来ずに授業になった。
気付けば放課後で、
思い出したように凛に話すことに。
「凛、黒田くんって、話したことある?」
「黒田?あー、女子に人気の?」
凛はないないと手を横に振り、
嫌そうな顔を見せた。
どうやらお気に召さない方のようだ。
「なんか王子様みたいに扱われてるけど、全然かっこよくないよね?」
「それは思う。ちょっと嘘くさいっていうか…、」
それに続けて昼休みの出来事を話す。
大和たちが来る前に言わなきゃ、と
焦って早口で伝えた。
「常套手段な感じよね、それも」
「んー、何であんな場所にいたんだろう」
黒田くんの校舎からしたら、
さっきいた場所に来ることなんて
滅多にないと思うんだけど。
私はそんなことを考えながら頭を傾げてると、
やってきた大和と京也。
「頭重いの?」
「な訳ねえだろ京也。首が折れてんじゃねえか?」
「いや何なの2人して」
荷物を持って玄関に向かう。
自然と4人で帰ることも多くなり、
他愛のない会話に花が咲く。
「2人して何深刻そうに話してたの?」
「え、深刻そうだった?」
やばい。悟られる。
そう思いながら外に出た時。
「棚橋さん!」
校門から大きな声がした。
聞き覚えがあるのは、
話をしていたからか。
「良かった、まだいたんだね」
「黒田、くん…」
凛と顔を合わせ、まずいと目で訴える。
こんな状況、暴君が好むわけなくて。
「今日、お昼本当にありがとう!」
「いや私何もしてないし、お礼なんてっ…」
実際私はその場に寄っただけ。
探したふりをしただけと言っても
過言ではない。
「近くまで来てくれて嬉しかった」
「あ、いや。近くまでって言うか、」
めちゃくちゃ誤解されるような発言だ。
前後を知らない大和は、
きっとその時点で勘違いをしているだろう。
見るに見れなくて、凛ばかり見つめる。
「棚橋さんってさ、」
急に黒田くんは私に近付いてくると、
顔をまじまじと見ながら。
「こんな可愛かったんだね」
「…はい?」
「コンタクトのおかげでよく見えるよ」
私は一歩後ずさる。
すぐ後ろに大和がいたようで、
私を受け止めてくれた。