そこには、君が





そして週末の昼休み。


今日は大和とお昼を食べる予定で、


天気も良いし外階段に行こうと教室を出た。


久しぶりにお弁当を作り、


大和の分も持って階段を降りる。


食堂を横切ろうとしたその時。






「棚橋さんっ」






黒田くんが遠くから私に手を振っていた。


いつもと同じく、頭を下げた。


少し緊張感が走る。


大和と2人の時にこんな状況になるのは、


初めてだったから。







「お前さ、」





「えっ、ちょっ…」







大和は突然私の腕を掴むと、


颯爽とその場から離れた。


目的の外階段の入り口に着く。


そこはあまり人は来ない場所。


強い力で握られた腕は、


そろそろ痛みが限界で。







「大和っ…、痛いっ、んっ、」






振り解こうとした時。


大和は私を壁に押さえつけると、


強引にキスをしてきた。


優しさというよりは怒ってますって


伝わってくる乱暴なキス。


息も吐かせてもらえないほどの、


荒々しいキス。







「んんんっ、苦しっ…い、」






私はもう限界だと、


大和の胸を叩き続けた。


ようやく離してくれた時には、


私の首元がはだけている。


大和にボタンを外されたから。






「何、他の男に愛想振り撒いてんだ」





「そんなことしてないでしょ」





余裕のない様子が見て取れる。


何とも、私にとっては、


こんな姿滅多に見られないので、


ちょっとくすぐられる。





「会釈なんて、する必要ないだろ」





「まあ…そうだけど、」






そうするしかないでしょ、なんて。


こんな空気で言えるわけがない。


むすっとする大和が、私を抱き締める。


心の内は可愛いでいっぱいだった。


それにしても、黒田くんの意図が分からず、


話を変えようとお弁当を食べることにした。






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