そこには、君が
「せーの!」
いち、に、いち、に…と、
息を合わせて声を出す。
さすがいつも一緒にいるだけあって、
息はピッタリだ。
「はい!」
凛は次の走者にバトンを渡す。
アンカーの人を見送り、やっと一息。
と思った矢先、
足を結んでいた紐が切れた。
鈍臭い私は。
「わっ!」
ズッコケた。
砂利の上に膝からダイブ。
痛みが走ったと思ったら、
手のひらも、膝小僧も、
血で真っ赤に染まっていた。
「大丈夫?明香、」
「大丈夫だよ!凛、次も出るんでしょ!」
行って行って、と凛を追い出す。
保健室の丸椅子に1人で先生を待つ。
救護室に行ったら、保健の先生が不在で、
保健室かと思って来てみたら誰もいない。
とにかく戻って来るかもしれないから、と
1人で待つことにした。
「痛いな…、」
少し乾いてきた傷が、
動きに合わせて痛みが増す。
まだ砂利を落としておらず、
まずはそこから手当てしないといけない。
「どうしたら…、」
そこへ。
ガラッと扉が開き、
中に入ってきたのは。
「よお」
可憐な保健の先生ではなく、
朝拗ねていた私の彼氏様だった。
「何でここにいるの」
「凛が慌てて呼びに来た。大和くん、助けて!ってな」
おそらく違うんだろうけど、
もう言い返す気にもなれなくて、
大和の言うことは全部無視した。
「先生いねえの?」
「んー、ここかなと思って来てみたけど不在っぽいね」
どれ、と私の前にしゃがむ大和は、
砂まみれの傷を見る。
「とりあえず洗えよ」
「…やっぱり」
それは分かっていて、
でも痛いのも想像出来る。
何か別の方法を知りたかったのに、
私たちにはそれすら難しい。
「暴れんなよ」
「わっ、ちょっと、」
大和は私の靴下に手をかけると、
そっと傷を庇いながら脱がせてくれる。
脹脛に触れる大和の手に、
反応する体。