そこには、君が
「保健室ってだけで、エロい」
「わっ、」
大和はそう言って私の腰に手を回す。
「今からキスするから、」
「あ、ちょっと」
大和はもう片方の手を私の顎に添えると、
優しく上に持ち上げる。
「カーテン押さえとかないと見られるぞ」
「…ばか、」
大和は私がカーテンを掴んだのを
確認すると、
静かにそっとキスをした。
少し触れるだけのそのキスが、
私の感情を昂らせる。
「棚橋さん、お待たせ!って、あれ…?」
そこへ保健室の先生であろう声が聞こえてくる。
返事をする訳にもいかず、
息を潜めてじっとする。
「あれー?おかしいな。棚橋さん?あれ…」
ずっと探しているのか、
私の名前を呼び続ける先生。
「出た方がいいかな、」
「黙っとけって。バレるから」
お互いにしか聞こえない小さな声で、
私たちは秘密の会話をする。
イケナイことをしている感じが、
変に興奮させる。
「本部かしら…、」
そう言って先生は保健室を出て行った。
私たちはそっとカーテンから顔を出し、
先生が行ったのを確認する。
「絶対先生、探してるよ…」
「だろうな。まあいいんじゃねえの」
大和はそのままベッドに腰を下ろし、
私に来いと手招きした。
「なんで」
何を言うか、
顔を見たら分かる。
「ちょっとここでイケナイことしませんか」
「…勝手にしてろ、ばか男」
やっぱりな、と顔に出し、
私は大和を放って保健室を出る。
追いかけてくる大和に捕まり、
一緒にグラウンドへ。
「リレー見てるからね」
「手縛り拘束変態プレイが、かかってるからな」
何だか余計なワードまで聞こえてくる。
私はフル無視しながら歩みを進めた。
「1位だったらね」
はいはい、と言いながら、
口笛を吹く大和は相当余裕なようで、
見ている私は何だか悔しい気分だった。