そこには、君が
「家…だけど」
『大和くん、大変なんだってね。怪我、大丈夫なの?』
「…え?」
母の言うことに、
心当たりがない私は、
とぼけるように返答を返す。
大和が怪我?
『美和ちゃんから聞いたけど、大和くん、停学になるくらいの騒ぎだったらしいじゃない』
「あ…うん…、そう、だね」
全く知らない。
大和が停学?
大和のママの名前も出してくるなんて。
だって、一言も…。
『明香、後で何か持ってってあげなね。美和ちゃんも会いたがってたよ』
「うん…じゃあね」
うわの空で電話を切ると、
私は床に座り込んだ。
大和が、停学。
怪我もしている。
そんな話、
誰からも聞いてない。
何で?いつから?
その時、ふと思い出した。
京也が言ってた、
"今日は風邪引いたから休むみたい"
の、一言。
おかしかった。
どんな時でも、絶対電話して
くれた大和が。
喧嘩したくらいで、
連絡よこさないなんて。
「大和っ…」
私は制服の上着を羽織るのを忘れ、
カッターシャツにスカートだけで、
マンションの階段を駆けた。
靴下を脱いでいた途中だから、
片方履いてなくて、片方は下がりっぱ。
そんなことを気にしてる暇はなくて。
今すぐ大和に会いたかった。
「大和…」
きっと誰かと喧嘩して、
何かがあって殴り合いになったんだ。
あの日、怒って出て行ったから、
もしかしたらその時かもしれない。
私のせいじゃん。
絶対、そうじゃん。