そこには、君が
「次、色別だよね」
「京也も出るんじゃん」
各色、テントの前。
種目最大の目玉競技である、
色別対抗リレー。
第一走者とアンカーは、
必ず3年生と決まっている我が校のルール。
赤組の第一走者は、京也。
「位置について、よーい」
パンッ。
ピストルの音が鳴って、
同時に各色スタートする。
初めの順位は、当然赤組が1位。
だって京也は野生の猿。
運動神経抜群な男で、
やっぱり類は友を呼んでいる。
「かっこいい!」
そんな京也を見て、
一際騒いでいるのは、
横にいる凛だ。
滑り出しは順調な赤組のバトンは1年生に渡る。
そのまま1位をキープ出来るかという時に、
2年の生徒が派手に転んだ。
というより、青組の生徒とぶつかり、
転けてしまったようだ。
赤組からの野次が飛び、
青組からの歓声が湧き上がる。
「やばいよー…」
凛の心配の声が漏れている。
次々に抜かれた赤組は、
今や最下位だ。
「いくら大和くんでも…、」
私は自分のことながら緊張する。
大和が走るっていうのに、
私がバトンを待っているみたいで。
「大和ー!!!」
「最後頼んだぞ!」
悲痛な願いが飛び交う。
赤組はおしまいか。
そう思われた時。
最下位で大和にバトンが回った。
アンカーはグラウンド一周200メートルを走る。
一位走者とは50メール差はありそうだ。
「明香、応援してあげなよ!」
パシパシと肩を叩かれ、
意を決める。
みんなの前でなんて、
私が1番苦手なことだけど。
「大和〜!頑張れ!」
今日はそんなこと言ってられない。
私はありったけの声を出して、
全力で応援した。
大和の出だしは好調。
気付けばグングンと追い抜いている。
「おおおおおおおお!」
赤組からの大歓声が響く。
このままいけば、絶対抜ける。
大和が全力で走っている姿は、
何よりもかっこよかった。