そこには、君が






「次、色別だよね」





「京也も出るんじゃん」





各色、テントの前。


種目最大の目玉競技である、


色別対抗リレー。


第一走者とアンカーは、


必ず3年生と決まっている我が校のルール。


赤組の第一走者は、京也。






「位置について、よーい」






パンッ。


ピストルの音が鳴って、


同時に各色スタートする。


初めの順位は、当然赤組が1位。


だって京也は野生の猿。


運動神経抜群な男で、


やっぱり類は友を呼んでいる。







「かっこいい!」





そんな京也を見て、


一際騒いでいるのは、


横にいる凛だ。


滑り出しは順調な赤組のバトンは1年生に渡る。


そのまま1位をキープ出来るかという時に、


2年の生徒が派手に転んだ。


というより、青組の生徒とぶつかり、


転けてしまったようだ。


赤組からの野次が飛び、


青組からの歓声が湧き上がる。






「やばいよー…」





凛の心配の声が漏れている。


次々に抜かれた赤組は、


今や最下位だ。






「いくら大和くんでも…、」





私は自分のことながら緊張する。


大和が走るっていうのに、


私がバトンを待っているみたいで。






「大和ー!!!」





「最後頼んだぞ!」






悲痛な願いが飛び交う。


赤組はおしまいか。


そう思われた時。


最下位で大和にバトンが回った。


アンカーはグラウンド一周200メートルを走る。


一位走者とは50メール差はありそうだ。







「明香、応援してあげなよ!」





パシパシと肩を叩かれ、


意を決める。


みんなの前でなんて、


私が1番苦手なことだけど。







「大和〜!頑張れ!」






今日はそんなこと言ってられない。


私はありったけの声を出して、


全力で応援した。


大和の出だしは好調。


気付けばグングンと追い抜いている。






「おおおおおおおお!」





赤組からの大歓声が響く。


このままいけば、絶対抜ける。


大和が全力で走っている姿は、


何よりもかっこよかった。






< 280 / 325 >

この作品をシェア

pagetop