そこには、君が




2日目の文化祭。


早朝からクラス全員教室に集まり、


具材を切ったり飾り付けしたりと、


大忙し。


今日はクレープ屋をすることになっていて、


生地を焼く係になっていた。


私たち4人は午前いっぱい店番。


レジをしたり、接客をしたりする予定だ。


やっぱり作業は女子だよねという話になり、


裏方に徹することに。






「これより、2日目の文化祭を開会します」





放送で開会宣言が流れ、


一気に校舎内が賑わってくる。







「4組、お化け屋敷するらしいよ!」





「かき氷、食べたい」






凛と作業しながら浮かれる私。


表がどうなっているのか分からないまま、


文化祭はスタートした。







「客いっぱい連れてきたよ〜!」






勧誘係になっていた男子が、


お客さんを連れてきたようで、


一気に賑やかな声が聞こえる。






「永森くん!」





「チョコバナナ1つください!」






作業中、そんな声が聞こえてくる。


大和に会いにきた女子が、


群がっている気がしてならない。






「絶対鼻の下伸ばしてる」






「そんなことないって、明香!」






手を止めることは出来ないので、


見に行くことも叶わない。


絶対昨日のリレーで、


また人気に火がついたみたいな、


そんな感じじゃない。







「チョコバナナ」





注文を聞いた大和は、


裏に伝える手作りの小窓から


そう伝えてくる。







「聞いてんのか裏方さん」






「…」






何だか浮かれているような気がして、


無性に腹が立つ。


そんなに女子にチヤホヤされて、


嬉しいのかと思ったら、


何だか顔が見れない。







「きっ、聞いてるよねっ…明香!」






「聞かなくても聞こえてる」






また私の悪い所が出て、


変に嫉妬して態度に出してしまう。







「何、怒ってんの?」





「…いや、そんなことも、ないんじゃないかな?」






私に聞いても無駄だと思った大和は、


凛にそう聞いている。


動揺する凛は、言葉を返すも、


ウロウロし出して作業が進まない。






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