そこには、君が
「京くん、かっこいい!」
「えー本当?それはありがとう〜」
大和を庇おうとしていた凛は。
「大和くん、鼻の下伸ばしすぎ」
京也の声を聞いて急にムスッとなり、
結局大和の味方はいなくなった。
バツが悪くなった大和は、
静かに小窓を閉め、姿を消す。
「何がありがとう、よ」
凛の小さい文句が聞こえてくる。
本人は気付いていないのかもしれないけど、
きっとこれは嫉妬しているに違いない。
「明香、凛、交代するよ〜」
お昼時になり、午後班の女子と入れ替わる。
私たちはエプロンを外すと、
代わる子に託し、外に出る。
「お腹空いたね」
「回ろっか!」
教室の外には女子たちが群がっている。
その中心にいるのは、
大和と京也と、その他の男子。
「…どうする、あれ」
「もう放って行こうよ、浮かれてるし」
いい気分じゃない。
女子は話したい一心なのは分かるけど、
2人はそれに合わせる必要はないはず。
「大和くん、それ美味しい?」
女子は、大和が手に持っている飲み物を、
覗き込むように見ている。
相変わらず大和は無視しているようだけど。
「ひとくち欲しいな!」
そう言って女子は、
手を差し出すと。
「いやお前に飲まれたらもう飲めない」
普通にそう言って睨みを利かす。
そして教室から出てきた私たちを見つけ、
無言でその輪から脱出。
「飲む?」
「なにこれ」
「隣で買ったスムージーっての?」
隣のクラスが販売していた、
バナナスムージー。
こういうのが好きなのを、
大和は知り得ているのか、
ちゃんと用意して待っていてくれた。
「買っててくれたの?」
「機嫌取りに来てます」
するとその横から京也も出てきて。
俺も、と苺色の飲み物を手渡す。
「凛のこと待ってました」
大型犬なはずなのに、
目の前にいる2人はしょぼんと
小さな子どもみたいな顔で
私たちを見ていた。