そこには、君が






「僕、シュートになるといつも外しちゃって」





何か悩んでいる様子の彼を、


私は放って置けなくなり。






「教えてあげたら?」





つい、お節介を焼いてしまった。


教えるのは、私じゃないくせに。







「教えて、くれるんですか?」





「…何が分かんねえんだよ」






ほら行くぞ。


そう言って大和は中学生の肩を抱き、


ゴールがある方へ向かっていった。


大和も困っている人を、放って置けない人だ。


私はお弁当を片付けながら、


2人の様子を眺める。


細かく丁寧に教え、


男の子のシュートが入ると、


自分のことのように喜び、


ハイタッチを交わしている。


その優しさが、好きだと感じた。






「2人とも、飲み物買ってきたよー!」





それから1時間、


大和は男の子を特訓。


シュート以外のコツも教えたようで、


たった1時間なのに物凄く上達したような気がした。







「いただきますっ!」





自動販売機で買った飲料水を渡すと、


冬なのに汗だくの男の子は


グビグビと美味しそうにそれを飲む。


横で同じように一気に飲み干す大和。







「デートのお邪魔してすみませんでした」





「何言ってんの!全然いいよ!それに上手になったね」





「大和先生のおかげです!」






このやり取りに、思わず吹き出す。


大和が、先生…。


満更でもない顔をしている姿が、


とてつもなく面白い。






「僕、下手くそで3年間レギュラーになったことないんです」






下を向いて、悲しそうに言う男の子は、


背が小さくて小柄。


中学名を聞けば、


バスケが強いと有名だった。






「最後のチャンスだけど、でもどうせ…」





弱気な男の子は更に下を向く。


そんな彼に。






「どうせとか言うな」




大和は言った。





「俺も、この姉ちゃんとどうせ付き合えないと思ってた」





そこで私の名前が出てきて、


変に緊張する。


そんなこと思ってたんだ。






「でもこうして一緒に居られてるだろ」





「どうして、付き合えたんですか?」






男の子の純粋な質問に。


大和は真剣な顔で答えた。





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