そこには、君が
「永森様、お時間です」
そう告げた。
お時間?あ、席に時間があるのか。
私は急いで立ち上がり、
帰ろうと身支度をする。
「お客様」
すると、次は女性の店員さんが、
私のそばへ近寄ってくる。
「座ってお待ちいただけますか?」
「え…、座っ。あ…はい、」
どういうこと?
訳も分からず座ったが、
帰れと言われて立ち上がったのに、
次は座れって…。
「会計行ってくるから、待ってろ」
「いいよ、私も行く…」
「待ってろって」
また強張った顔で、
私を見ている大和は。
自分の荷物を全て持つと
男性店員の後に続いてフロアを
出て行った。
「…ん?なんで?」
訳が分からず取り残された私は、
どうすることも出来ず、
言われたまま座って待つことにした。
それから5分が経ち、
女性の店員さんがシュワシュワした
飲み物を持ってきてくれた。
「シャンメリーです」
「えっと…、ん?お会計は、」
「これを飲まれましたら、移動します」
移動?
どこからのシャンメリー?
店員さんは多くを語らず、
淡々と業務をこなし、
終始笑顔でこちらを見ている。
「いかがでしたか?」
「あ、び…美味でした」
美味でした、なんて初めて言った。
ちょっとテンパっている私。
どうしたらいいか分からず、
グラスを店員さんに渡すと。
「では行きましょう」
手でこれから行く先を示し、
私に身支度をするように言った。
行きましょう?
お会計が終わったのかしら。
「足元、お気をつけ下さい」
「あ、はい…」
エスコートというものだろうか。
店員さんが先を歩き、
私を案内してくれる。
その経路は先ほど店内に入った時の
逆のルートなので、私でも出口は分かる。
手厚いサポートなのだろうか。
そんなことを考えながら着いていくと、
店員さんは出口を出た後も歩みを止めない。