そこには、君が
「あの、どこへ…?」
「こちらへどうぞ」
またまた多くを言わず、
黙って着いてこいと言わんばかりに
スタスタと歩いていく。
そして、大和がいない。
「お2人とっても素敵ですね」
「…そう、ですか?」
先を歩く店員は、
チラリとこちらを見ながら、
にっこりとはにかむ。
褒められることは悪い気はしないが、
何が素敵なのか詳しく聞きたい。
「到着いたしました」
「ここ…?」
足を止めた場所は、
大きな扉の前。
欧風の扉が何とも美しい。
「あの、これどういう…?」
「申し訳ございません」
店員さんは笑顔で頭を下げると、
少し申し訳なさそうにこちらを見た。
「私からは何もお伝え出来ないのですが、」
少し躊躇った後。
「きっとお喜びになられると思いますよ」
「喜ぶ…?」
私が、喜ぶこと…?
理解が追いつかず、
頭をフル回転させる。
そして店員さんは、こう聞いた。
「彼氏さんの、どこがお好きですか?」
「大和の、好きな所…ですか?」
急な質問に少し照れ笑いをする。
好きな所、か。
なんて答えるべきか迷いつつ。
「全部、好きです」
恥ずかしさを拭えず、
微笑んでしまう。
店員さんも一緒に笑って、
和やかな雰囲気になった時。
「お願いします!」
店員さんは急に大声でそう言った。
私は驚きすぎて固まる。
そして。
急に目の前の扉が開いた。
しかも、両方が一斉に。
「………、何、」
煌びやかな照明が漏れてくる。
ずっと暗闇を見ていたせいか、
奥が眩しくて見えない。
けれど、その先に誰かが立っていた。
「どうぞ中へ」
先ほどまで私を誘導してくれていた店員さんが、
最後に私にそう伝えると、
軽く会釈をして去っていった。
段々明るさに慣れた私の目に見えたのは。